一人よりふたり。

歩いていて靴の紐がほどけることがある。
そのままにしておくと気になるし
第一あぶないので早く結び直したい。


だけど直すタイミングが分からない。
横にずれる場所がなかったり
荷物を置くこともできなかったりする。



一人じゃない時は一緒にいる人に声をかけて
かばんも持ってもらったりできるのだが



ほとんど一人の時にそういうことはおこるものなので
ほんとうに困ってしまう。



どこを見渡しても人が列をつくって歩いている。
しゃがんでじゃまにならない場所などない。
ちょっとでも止まると後ろからぶつかられる。



小さい時から電車にのって新宿のピアノ教室とか
スイミングスクールだとかにかよっていたので
人込みには慣れていると思っていた。



でももしかしたら苦手になったのは大人になってからかもしれない。
子供の頃世界の住人は自分だけだった。
まわりの人の目なんてきにしなかった。
通路の途中で靴紐を直してても
じゃまに思う人の舌打ちもきこえなかった。



子供の頃と同じように一人なのに
子供の頃より心細い。




今日は荷物を持って一緒に端のほうでまっていてくれる人がいた。
自分以外の住人のあたたかさを知ったのも大人になってからだった。




読了しました。

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